22 | SEEDS研究の内容(大学院向け)臨床判断能力を測定するルーブリックを開発し、看護職の内省やメタ認知力を高めたい 医療事故のうち転倒?転落は療養上の世話の中で最も多く、看護学生が実習中に体験したヒヤリ?ハットにおいても最も多い。一般的に、転倒リスクアセスメントツールが用いられているが、患者の入院時や状態が変化した時に使用されているため、実際には五感を使った判断や行動が先行している現状が明らかになっている。五感のうち、視覚は87%を占めており、看護師は視覚情報を用いて臨床判断を繰り返している。看護師の臨床判断と眼球運動の関連を明らかにした研究では、臨床経験年数や場面によって特徴に矛盾があった。そのため、臨床判断能力の違いを属性ではなくパフォーマンス評価(ルーブリック)を用いて評価したいと考えた。現在は、転倒リスク場面における看護師の臨床判断能力について明らかにし、臨床判断能力や場面の違いによる眼球運動との関連を明らかにすることを目的として研究に取り組んでいる。臨床判断/転倒/パフォーマンス評価/ルーブリック/SDGsRieko Teraicontact: riekote@ishikawa-nu.ac.jpリサーチマップ https://researchmap.jp/read0153361看護職一人ひとりが、人々に質の高い?適切な医療?看護を提供し、専門職として活躍し続けるためには、生涯にわたり学び続け、自らの資質向上を図ることが求められます。大学では皆さんを「能動的な学び手」と捉え、他者との協働を通じた学びや、人間としての強みを活かした専門職になるための学びを重視していきます。メッセージ図.観察時における看護師の視線の軌跡研究分野転倒予防/看護教育/SDGs所属学会日本看護科学学会/日本看護研究学会日本看護学教育学会/医療の質?安全学会転倒予防学会学歴?経歴2019年石川県立看護大学看護学研究科博士後期課程修了 博士(看護学)2007年石川県立看護大学成人看護学講座 助手2014年石川県立看護大学成人看護学講座 助教2019年石川県立看護大学基礎看護学講座 講師2022年石川県立看護大学基礎看護学講座 准教授受賞2017年医療の質?安全学会 上原鳴夫記念若手研究奨励賞論文●視覚情報に基づく転倒予防ケア決定までの臨床判断ルーブリックの作成-信頼性?妥当性の検討-(2024)医療の質?安全学会誌,19(1),14-25.●転倒リスク場面における看護師の視覚情報に基づくアセスメント(2015)医療の質?安全学会誌, 10(1), 3-10. ●転倒リスク場面観察時における新人看護師と熟練看護師の眼球運動の特徴(2017)看護人間工学研究誌, 17, 55-61. ●看護場面における視線解析を用いた研究の動向と今後の課題(2017)石川看護雑誌, 14, 13-22. ●看護師の転倒リスクマネジメント力の構成概念とその構造(2009)石川看護雑誌, 6, 99-106. 競争的資金等の研究課題●看護師の転倒リスク場面における視覚情報の取り込みと臨床判断(2007-2008年度)科学研究費助成金 若手研究B 研究代表者●新人看護師の視覚情報に関する転倒リスクアセスメント教育プログラム(2015-2018年度)科研費事業 若手研究B 研究代表者●パフォーマンス評価を用いた看護師の動作観察能力を高める教育プログラムの効果(2019-2022年度)科研費事業 研究活動スタート支援 研究代表者社会貢献活動●北陸大学薬学部非常勤講師(2023年-)●金城大学看護学部, 専攻科特別講義(2020年-)●石川県災害ボランティアコーディネーターとしての災害ボランティア など看護師の視覚情報に関する観察力と臨床判断能力の向上を目指す研究の概要 その道のプロは「観察眼」が違うと言われている。それは、看護の分野においても当てはまる。看護師は患者の情報について五感を用いて把握している。五感を用いた情報収集の中でも87%は視覚情報といわれており、視覚情報は看護実践の質を左右するものであるといっても過言ではない。看護師は、瞬間的に、この視覚情報もとに患者の状態を専門的知識に基づいて判断し、ケアの実践を行っていると考えられている。そのため、看護師がどのように視覚情報を得ているのかを明らかにすることは、より良い患者ケアを提供するために重要であるといえる。では、観察眼のある人との違いは何にあるか。『見ているもの』に違いがあるのか、『見ている時間』が違うのか。それとも、見ても知識と結びつかないのか。それらの疑問に対して、看護師や看護学生を対象に調査している。寺井 梨恵子 准教授
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