34 | SEEDS研究の内容(大学院向け)人のウェルビーングの基礎となる愛着形成や修復について、すべての人が学び、訓練し、支援し合える社会実現に向け、看護の視点を取り入れた「家族学」を構築 子どものウェルビーングには、親あるいは重要他者との情緒的な絆である愛着が不可欠だが、親自身がその親との愛着を築けていない場合も多い。親に寄り添い、親子関係や夫婦関係を改善できるよう支援する中で、そのプロセスが、自身の愛着の修復や傷の癒しのプロセスにもなり得る。レジリエンスは、Ordinary Magic(当たり前の魔法)とも呼ばれ、ごく簡単な方法で、親が変わり、子どもが変わり、家族が変わる奇跡を多く見てきた。痛感するのは予防の大切さである。家族を築くのに必要な知識やスキルを子どもから大人まで学び、訓練し、実践するための「家族学」を日本のコンテキストに合わせた形で構築し広めることで、多くの問題を未然に防ぎたい。家族のレジリエンス/養育態度/感情調整/愛着形成?修復マインドフルネス/家族学Hiromi Tobecontact: tobejc@ishikawa-nu.ac.jpリサーチマップ https://researchmap.jp/hiromi_tobe図. 看護学?心理学?社会学?教育学など異分野融合による新学問領域「家族学」の構築「無理?無駄?無謀と言われても、四の五の言わずにやってみる」私自身、新しい扉を叩いて看護学を学び始め、こうつぶやきながら研究を続けてきました。今、何をしたらよいか分からなくても、自分に何ができるか見えなくても大丈夫。扉を叩けば道は開かれ、一歩踏み出せば驚くような景色が広がります。メッセージ研究分野生涯発達看護学/小児看護所属学会日本小児看護学会/日本家族看護学会/日本子ども虐待防止学会/日本家族療法学会/日本周産期メンタルヘルス学会/日本看護科学学会/看護理工学会/日本母性衛生学会/日本マインドフルネス学会学歴?経歴2015年筑波大学大学院修士課 修了 修士(看護科学)2018年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了 博士(保健学)2018年東京大学大学院医学研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター 特任助教2022年同上 特任講師2023年石川県立看護大学小児看護学 教授論文●Tobe H, Sakka M, Kita S, Ikeda M, Kamibeppu K. The efficacy of a resilience-enhancement program for mothers in Japan based on emotion regulation: a randomized controlled trial. Int. J. Environ. Res. Public Health. 2022. 19,14953.●Tobe H, Soejima T, Kita S, Sato I, Morisaki-Nakamura M, Kamibeppu K, Ikeda M, Hart C, Emori Y. How participating in a group-based anger management program changed Japanese mothers’ cognition, attitude, and behavior: A Pre-Post Study. Ment. Health Prev. 2021; 25, 200228書籍等出版物戸部浩美 訳.マインドフルペアレンティング 忙しいママとパパのためのマインドフルネス.北大路書房, 2020.講演?口頭発表等●Tobe H. Building up your life with resilience: How to be happy and help others to be happy. Taipei Medical University. July 26, 2021●Tobe H, Sakka M, Kamibeppu K. Resilience enhancement program for mothers focused on emotion regulation of anger: A randomized controlled trial in Japan. International Family Nursing Conference (IFNA), 13-16 August 2019, Washington DC, USA.競争的資金等の研究課題●若手研究「養育態度尺度日本語版開発と親の適切な養育を支援するコミュニティベース参加型研究」(代表/科研費事業:2020-2022年度)●若手研究「ADHDを持つ子どもとその親向けのマインドフルネスプログラムの日本語版開発と効果検証」(代表/科研費事業:2023-2025年度)社会貢献活動親のレジリエンスを高めるプログラムの研究結果を元にワークショップを親?専門職者を対象に全国各地で開催子育て?夫婦のピンチを、自身への思いやりを深め家族の絆を強めるチャンスに変える!研究の概要 育児は誰にとっても大きなチャレンジであり、育児ストレスにより怒りを言葉で子どもにぶつける等のマルトリートメントは広く一般的に見られ、子どもに長期的で深刻な悪影響を及ぼすだけでなく、夫婦の危機や自尊心?自己効力感の低下にもつながる。そこで、適切な育児法だけでなく、親が自身の感情と向き合い、レジリエンス(精神的回復力)を高められるように学び、訓練するプログラムを開発し、ランダム化比較試験で検証し、レジリエンス、怒りのコントロール、自尊心、問題焦点対処、夫婦コミュニケーション関係が改善した。 養育態度と子どもの特性の関連やマインドフルネスを取り入れた育児についても検討し、これまでのポピュレーションアプローチに加えて、被虐待経験、発達障害、不登校、養子縁組?里親など、育児により困難を抱える対象のニーズや支援についても調べ、より効果的な支援を導き出せるよう研究を重ねている。戸部 浩美 教授
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