40 | SEEDS研究の内容(大学院向け)臨床実践で生じる素朴な疑問を大切にしたいあなたの疑問が看護を変える力に リンパ浮腫のケアは、視診や触診による外観評価に基づきケアが選択される。しかし、臨床で、外観評価と重症度が一致せず、ケア選択に悩み、浮腫管理に難渋する経験が多々あった。そこで、病態の可視化に着目し、エコーを用いた真皮?皮下組織の観察研究により、症状との関連性やケア前後での特徴的な所見を明らかにしてきた。今後は、これらの知見を体系化し、画像評価の自動化や遠隔化システム構築を図ることで、様々な地域や国への実装を目指していく。 なお、本研究は、この臨床疑問に賛同し、浮腫ケアの質向上という夢を共に描いた看護学?医学?理工学等の研究者?医療者らと研究チークを構成し実施している。がん/リンパ浮腫/スキンケア/エコー/遠隔Misako Daicontact: daim000@ishikawa-nu.ac.jpリサーチマップ https://researchmap.jp/misakodai乳がん術後の上肢リンパ浮腫子宮がん術後の下肢リンパ浮腫図1.リンパ浮腫の外観思えばいつでも、私のまわりには“臨床課題”を大切にして研究に励む仲間がいました。石川県立看護大学には、看護の未来へ夢を描く教員や学生がたくさんいます。看護の発展に向けて、一緒に夢をもって“臨床課題”解決への研究的思考を磨いてみませんか。メッセージ図2. 小型エコーでリンパ浮腫患肢の観察をしている様子研究分野成人看護学/臨床看護学/看護理工学所属学会日本看護科学学会/国際リンパ浮腫フレームワーク?ジャパン研究協議会/日本リンパ浮腫治療学会/看護理工学会 など学歴?経歴●群馬大学医学部保健学科看護学専攻 卒業●金沢大学大学院医学系研究科修了 博士(保健学)●慶應義塾大学病院脳神経外科病棟 看護師●金沢大学医薬保健研究域看護科学領域 助教●東京大学大学院医学系研究科 特任講師●藤田医科大学社会実装看護創成研究センター 准教授●石川県立看護大学成人看護学 教授受賞●British Journal of Nursing Award 2024, Chronic oedema Nurse of the year受賞, 2024●優秀演題賞.第6回日本リンパ浮腫治療学会, 2022●ILF Award. 6th ILF Conference, 2014論文●Dai M et.al. Multidisciplinary approach for successfully managing lymphorrhoea and epidermolysis in lymphoedema patient with Klipplel-Trenaunay syndrome: A case study, BJN, 33, 104-108, 2024●Dai M et.al. Association of Dermal Hypoechogenicity and Cellulitis History in Patients with Lower Extremity Lymphedema: A Cross-Sectional Observational Study. Lymphat Res Biol, 20, 376-381, 2021.書籍等出版物リンパ浮腫エコー, がん看護に生かす画像の見かた読みかた 見るみるわかるBOOK, 252-255, メディカ出版, 2024講演?口頭発表等Misako Dai. Ultrasonography for lymphoedema. Invited lecture, 10th International Lymphoedema Framework Conference, UK, 2023競争的資金等の研究課題●科研費基盤研究(B)代表:リンパ浮腫ケア選定のための超音波検査技術アセスメントと遠隔システムの確立, 2023年度-2027年度●科研費挑戦的研究(萌芽)代表:リンパ浮腫の蜂窩織炎再発予防に向けたアドバンストスキンケア方法の開発社会貢献活動第12回国際リンパ浮腫フレームワーク?ジャパン研究協議会学術集会大会長(石川県立看護大学, 2023.9.17)がんと浮腫と共に 健やかに暮らす 未来を創る研究の概要 目指す未来は、がんや浮腫の方々が安全?安心?快適に暮らすことができる社会の実現である。特に、がん治療後のリンパ浮腫と、それに伴うリンパ漏?蜂窩織炎は重要な臨床課題で、適切なアセスメントやケアが不十分のために重症化し、身体?心理?社会的影響をもたらすことが多い。この解決には、アセスメントやケア方法の革新的変化が必要で、かつ医療者?患者教育の充実化、そして、地域格差の均霑化が求められている。 そこで、石川県のどの地域でも、全国のどの施設でも、世界中のどの国でも、質の高いケアを受けられるシステムを開発するべく、看護理工学の手法を用いた異分野融合?多施設共同?国際共同で研究を行っている。特に、超音波技術(エコー)を用いたリンパ浮腫のアセスメントは世界をリードした革新的方法であり、今後、リンパ浮腫エコーアセスメントとそれに基づくケア方法の体系化、医療者や患者への教育方法の確立、実装への研究を行う。臺 美佐子 教授
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