研究者情報 研究シーズ集
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58 | SEEDS研究の内容(大学院向け)自閉スペクトラム症者が抱く看護師への思いはなにか、彼らのニーズはなにか、彼らの語りから解き明かす 入院中の自閉スペクトラム症者にインタビューを実施したところ、彼らは入院中の看護師からのケアを実感しながらも、看護師に存在を希薄に感じると語っていた。一方看護師は、自閉スペクトラム症者の自己肯定感を高めようとする関わりや認知面への働きかけを行うなど、熱心に看護ケアを実践していた。 ケアの実践は、特に精神科領域においては必ずしもケアの提供側と受け取る側のケアの必要性の認識の一致が行われない。しかしながら、コミュニケーション障害をもつ自閉スペクトラム症者には看護師との間で交わされる相互交流から得られる経験や認識、対人関係スキルの学びは、とても重要であると考える。今後は、様々な場面で起こる自閉スペクトラム症者と看護師の交流の中で自閉スペクトラム症者が何を感じ、考えているのか、それを受けて看護師はどのように看護実践を行っていくかを、自閉スペクトラム症者自身の語りから明らかにしていきたい。自閉スペクトラム障害/発達障害/農福連携/思春期のメンタルヘルスShingo Ohecontact: ohe1111@ishikawa-nu.ac.jpリサーチマップ https://researchmap.jp/shingoohe図1. 知的?発達障害者が使いやすい農業機械の開発に向けた 調査の様子看護はとても奥深いものです。その中でも精神看護では相手や自分自身の思いに関心を寄せ、理解しようとするところから始まります。たくさんの楽しいこと、大変なことを一緒に進んでいけたら良いなと思っています。メッセージ 図2.あおカフェの様子研究分野精神看護学/児童思春期精神看護学所属学会日本看護科学学会/日本看護研究学会日本精神保健看護学会/日本精神科看護協会北陸公衆衛生学会/看護実践学会学歴?経歴●金沢大学医薬保健学総合研究科 修士(看護学)●金沢大学医薬保健学総合研究科 博士(保健学)論文●国内における成人期広汎性発達障害者への看護ケアの現状, 石川看護雑誌, 15, 27-38, 2018●What patients with pervasive developmental disorders think of and expect from nurses, Journal of the Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University, 39(1), 1-10, 2015●アスペルガー障害患児から暴言?暴力を受けた看護師の態度とかかわりの様相, 看護実践学会誌, 28, 1-8, 2015講演?口頭発表等自閉スペクトラム障害患者の認識と看護師の意図の間に生じるズレとニーズをふまえた効果的な看護ケアの検討(第40回日本看護科学学会学術集会, 2020)競争的資金等の研究課題●障害者による粗飼料生産での機械利用とヒツジ生産を支援する技術開発(分担/イノベーション創出強化研究推進事業:2022-2023年度)●精神科訪問看護師が実践する地域で生活するASD者への効果的な看護ケアに関する研究(代表/科研費事業:2020-2022年度)●患者の自殺を体験した精神科看護師のメンタルヘルスケアプログラムの開発(分担/科研費事業:2019-2024年度)社会貢献活動●石川県かほく市自殺対策推進委員会 副委員長●発達障害児の保護者学習会「あおカフェ」 講師自閉スペクトラム症の方の語りから、彼らが何を考え、何を感じているかを探る研究の概要 わが国では、発達障害者支援法の施行により、発達障害者(児)に対して障害特性やライフステージに応じた支援が行われている。自閉スペクトラム症者に関する疫学については様々な先行研究があるが、国内外での調査では有病率が0.9?2.8%とされ、自閉スペクトラム症は決して稀な疾患ではなく、今後も社会全体で支援していくことが必要であることがわかる。自閉スペクトラム症者への支援には多職種が関わる。その中でも看護師は生活の支援から疾患理解、対処方法の確立など多岐に渡ってサポートしている。自閉スペクトラム症者がよりスムーズに社会参加し暮らせるように、彼らの語りから理解を深め、生活を支援し、就労へ繋ぎ、自閉スペクトラム症者が暮らしやすい社会を目指して研究を行っている。大江 真吾 講師

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