60 | SEEDS研究の内容(大学院向け)看護場面における感情体験の言語化および意味理解を通じて、回復の体験過程を明らかにする 看護場面における感情体験について看護師に語ってもらうインタビューを実施し、その内容について質的記述的な分析を加える研究手法を取っている。研究の過程で、看護師は、看護場面でさまざまな感情を味わいながらも、特に否定的な感情については、漠然とした不快感のまま消滅させてしまっている実態が浮かび上がってきた。しかし、その感情をともに整理して考えていくと、患者のケアに関して重要な気づきが得られることもまた明らかにされつつある。看護師のどのような働きかけが、どのように作用して、患者の回復を促していくのかについて明らかにすることは、援助の質を高めることに寄与すると考えられる。今後は、看護師に対してのみならず、患者に対するインタビューも試みながら、感情を活用した看護方法論としての確立を目指していきたい。精神看護/援助関係/感情活用能力/人間関係とコミュニケーションAyano Kawamatacontact: kawamata@ishikawa-nu.ac.jpリサーチマップ https://researchmap.jp/ayanokawamataやりたいことを、やりたいように、やってみましょう。失敗を恐れすぎず、挑戦することからすべては始まります!可能性に溢れたみなさんとともに学び、世界を探究していけることを楽しみにしています。メッセージ研究分野精神看護/援助関係/感情活用能力所属学会日本保健医療行動科学会学歴?経歴亀田医療大学大学院看護学研究科看護学専攻 修士(看護学)書籍等出版物●川俣文乃, 髙濵圭子, 美濃由紀子, 宮本眞巳(2016). 連載 看護場面の再構成による臨床指導第7回 感情活用に向けた継続学習-積極的傾聴と無力の表明. 精神科看護. 43(4), pp. 34-41. 精神看護出版. ●川俣文乃, 宮本眞巳(2020). 隔月連載26 看護場面の再構成による臨床指導 感情活用の多様性 自己一致は援助関係づくりにとって不可欠か. 精神科看護. 47(4), pp. 53-59. 精神看護出版. 講演?口頭発表等Ayano Kawamata, Masami Miyamoto, Yukiko Mino. Psychiatric Nurses’ Emotional Experience as the Foundation of Relationship Building (26th East Asian Forum of Nursing Scholars 2023)相互作用の観点から人間関係を見つめる―ケアされる人もする人も健やかに生きるために研究の概要 看護師は、患者に献身的に寄り添い、常に穏やかであたたかく振る舞うことを社会から求められてきた。そのような期待に応える一方で、看護師自身のメンタルヘルスに関心を寄せ続け、バーンアウトを防いでいくことは、看護師の心身の健康にとって重要な課題である。また、患者―看護師関係は、専門家としての立場からの一方向的な援助に留まるのではなく、相互に作用しあってともに成長していく関係性であることを、忘れてはならない。時には、看護師自身の思いを率直に伝えることが、援助関係を発展させ、患者の成長を促すことが示唆されている。 看護師が、ケアのプロフェッショナルとしてより自律的に振る舞いながら、患者の成長を促す関わりは、どのような体験過程を経ることで実現されていくのか、詳細はまだ明らかにされていない。感情は、体験過程について考えるための手掛かりの宝庫である。しかし、自身の感情や身体の感覚に自覚的になることや、そのことに意味付けをしながら考え、言葉で表現することに馴染みの薄い人が多いのが現状でもある。まずは、感情に注目して表現することの面白さや豊かさ、充実感を人々と共有しながら、研究を続けている。川俣 文乃 助教
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