研究者情報 研究シーズ集
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神経管閉鎖障害(Neural tube defects:NTDs)は二分脊椎を含む脊髄髄膜瘤、脳瘤、及び無脳症等の先天異常です。女性が妊娠する1か月以上前から葉酸を補足することで発生リスクが低減すると言われています。日本では葉酸サプリメントの摂取が推奨されて20年以上経過しましたが、妊娠前の葉酸サプリメントの摂取率は低率であり、NTDsも減少していません。妊娠前の葉酸サプリメント摂取率を向上するための研究を行っています。AYA世代(Adolescent and Young Adult:思春期?若年成人)とは15歳から39歳までの若い世代を指す言葉である。この時期に多くの人は進学や就職、パートナーとの交際や結婚、妊娠?出産などのライフイベントを経験する。AYA世代でがんに罹患すると、がん治療および治療による後遺症により外見や性機能?生殖機能に影響を与える場合がある。このことは医療の発展によりがん患者の5年生存率が向上しており、AYA世代がん患者は治療後の長い人生をいかに自分らしく生きてゆくかを模索する状況において重要な課題である。この課題について、様々な治療段階にあるAYA世代がん患者や周産期にあるAYA世代がん患者のセクシュアリティ支援の方法や支援体制構築に関する研究に取り組んでいる。女性の尿失禁は妊娠や出産が契機となり発症することが多く、加齢とともに増加し、尿失禁がQOLに影響するという点では妊娠や出産時に関わる看護者は女性の生涯を通して考えなくてはならない問題である。産後に尿失禁が起こる原因としては、骨盤底筋群の弛緩により膀胱が下降することや、妊娠中に子宮と癒着した膀胱が産後の子宮復古とともに下降するためと考えられていることから、膀胱底の位置と骨盤底筋群の筋力の変化を縦断的に測定し尿失禁との関連を検証することを検討している。近年、口腔の健康が全身の健康に密接に関係していることが明らかとなっている。周産期においても口腔内からの感染?慢性炎症巣としての歯周病が早産や低出生体重児出産などを引き起こす可能性があるという報告があり、妊婦歯科健診受診率向上を目指した支援方法を見出すための研究に取り組んでいる。子どもが幼少期に養育者との間に築く安定して安心が得られる関係性=愛着は、その後の人格形成の土台となり、生涯にわたって個人、また家族や社会のウェルビーイングに大きな影響を与える。世代間伝達の影響、身体?精神的疾患、貧困、不登校、発達障害など、様々な要因で愛着形成がうまくいかない場合も多いため、愛着形成不全の予防や修復のために周囲の支援が不可欠である。人生に起こるストレスや危機にあっても立ち直る力=レジリエンスを高めるために、認知行動療法やマインドフルネスを用いた教育や訓練による支援を行っている。子ども虐待?不適切な養育は子どもの発達に広範囲で深刻な衝撃を及ぼすことが明らかとなっており、発生の未然防止が極めて重要である。様々な社会の変化により子どもと関わる機会が少なくなり、「親になること」について考えたり、子育てについて学んだりする機会がないまま親になり、育児不安や不適切な養育につながってしまうことが指摘されている。そこで、親になる前の若者にアプローチする子ども虐待予防支援プログラムの開発をめざし検討を重ねている。70 | SEEDS研究テーマ研究テーマ研究テーマ研究テーマ研究テーマ研究テーマ神経管閉鎖不全の発生リスク低減のための葉酸サプリメント摂取に関する女性の認識AYA世代がんサバイバーのセクシュアリティに関する支援、母乳育児支援膀胱底の位置の縦断的計測による妊産褥婦の尿失禁リスク予測のための指標の探索妊婦歯科健診の受診率向上を目指した取り組み家族のレジリエンスを高め、愛着形成と修復を支援する親になる前から始める子ども虐待予防支援プログラムの開発曽山 小織 [P.30]研究キーワード 神経管閉鎖障害/葉酸サプリメント 桶作 梢 [P.31]研究キーワード AYA世代/セクシュアリティ/がん/母乳育児河合 美佳 [P.32]研究キーワード 尿失禁/膀胱/妊産褥婦野沢 ゆり乃 [P.33]研究キーワード 妊産婦/妊婦歯科健診/育児不安戸部 浩美 [P.34]研究キーワード 虐待/マルトリートメント/家族/レジリエンス/愛着 養育態度/感情調整/マインドフルネス/認知行動療法千原 裕香 [P.35]研究キーワード 子ども虐待予防/親になること/子育て プレコンセプションケア/ヘルスリテラシー/保健行動次世代育成教育/DX(Digital Transformation)

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