ICUに入室する患者は意識障害や生命維持装置の装着によりコミュニケーションが困難となりやすい。しかし、患者は死への恐怖、孤独、不安を感じたり、呼吸困難感や痛みを感じたりと様々な苦痛を抱えている。ICU看護師もまた、患者の苦痛やニーズの捉えづらさを感じている。このような声にならない患者の訴えを看護師がどのように捉え、苦痛緩和や回復に向けて援助しているのか、未だ言語化されていない熟練看護師の実践や思考過程などの暗黙知の解明に取り組んでいる。がんは、日本における死因第一位を占めており、死亡数は増加し続けている。手術や化学療法、放射線療法などのがん治療が発展する一方で、その副作用によって患者のQOLに大きな影響を及ぼしている。浮腫は、手術や放射線療法によるリンパ浮腫、化学療法による浮腫、終末期の浮腫など複数の要因で発生し、重症化することでQOLの低下のみならず患者の生命予後に重大な影響を及ぼす可能性がある。そのため、浮腫を早期に発見し、早期治癒に導くためのケア確立を目指して研究を行っている。日本人の2人に1人ががんに罹患すると推計されているが、医療の進歩により、がんの生存率は向上している。がん患者が定期的な通院、仕事や家事を調整し、病気に伴う生活の変化にうまく対処していくためには、他者からの理解と協力が必要となる。そのため患者は、自己の病名をいつ、誰に、どこまで、どのように伝えるかという意思決定に迫られる。特に子育て中のがん患者は、子どもの特性や発達段階に応じて、子どもの自己の病名をどう伝えるかという悩みを抱いている。このようながん患者の意思決定に関する思いや体験を明らかにし、看護支援の在り方について検討することを目的に研究に取り組んでいる。高齢者施設では看取りの説明を看護師が担っている。以前取り組んだ研究では、説明時の困難として、看護師は「看取りの説明には経験が必要であり、誰にでもできるものではないから難しい。」と語り、『看取りの説明を担える看護師の育成』が課題である。さらに、「最終的に看取りに納得できないと看取りの説明時の決断を後悔するため、看取りの説明は重要であり難しい。」という家族の立場を踏まえた語りもあった。看取りとは、看取りの説明から最終的な看取りまで切り離せるものではなく一連のプロセスである。最終的に悔いのない看取りを迎えるには、看取り期に入る説明のタイミングや内容が重要である。高齢化率が上昇する中、これまでと同じケア方法では、同等あるいはより質の高いケアを全ての高齢者に提供することは難しくなります。その課題を解決するには、看護ケアも変化していかなくてはなりません。世の中の変化とともに、高齢者を取り巻く環境も大きく変化し、様々なテクノロジーが身近なものになってきています。現在、そして未来の高齢者の生活を支えるため、それらのテクノロジーを活用し、新たな看護技術の開発に取り組んでいます。笑いヨガは、1995年にインド人医師であるMadan KatariaとヨガインストラクターであるMadhuri Katariaによって考案された。笑いヨガは、笑いのエクササイズとヨガの呼吸法を組み合わせたユニークな健康法で、誰でもユーモアや冗談に頼らずに皆で一斉に笑うという特徴がある。この笑いヨガをグループホームで生活する認知症高齢者が実施することによってどのような効果が得られるのかを明らかにする。72 | SEEDS研究テーマ研究テーマ研究テーマ研究テーマ研究テーマ研究テーマクリティカルケア領域における人工呼吸器装着患者の回復を促進する看護実践がん患者の化学療法による浮腫ケアの開発子どもに自己の病名を伝えることに関する乳がん患者の悩み高齢者施設における看取り期の説明に関する実態調査及び看取りの説明を担う看護職に必要な実践能力と説明者育成のための支援の検討? 褥瘡のアセスメントおよびケア技術に関する研究?高齢者の在宅療養支援に関する研究認知症高齢者における笑いヨガの効果大西 陽子 [P.42]研究キーワード クリティカルケア/人工呼吸器装着患者/質的研究今方 裕子 [P.43]研究キーワード がん/化学療法/浮腫/皮膚障害瀧澤 理穂 [P.44]研究キーワード がん/意思決定/子どもへの説明額 奈々 [P.45]研究キーワード 高齢者施設/看取り/実践能力北村 言 [P.46]研究キーワード 高齢者/褥瘡/在宅/遠隔中道 淳子 [P.47]研究キーワード 認知症/笑いヨガ/ストレス
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